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特許侵害訴訟における裁判管轄と実務上のimplication

1 特許侵害訴訟は、特許発明という技術を取り扱う特殊な訴訟類型です。その手続の概略をご説明します。最初にご説明するのは裁判管轄です。

 

2 特許侵害訴訟も民事訴訟の一つであり、手続の基本的な枠組み自体は、貸金返還請求訴訟などの通常の民事訴訟と同様です。例えば、通常の民事訴訟では三審制が採られていて、地方裁判所、高等裁判所、最高裁判所(または簡易裁判所、地方裁判所、高等裁判所)と、合計3回、審理を受けることができますが、この点は特許侵害訴訟も同様であり、合計3回の審理を受けることができます。

ですが、特許侵害訴訟の場合、発明や技術を取り扱う点で専門技術的な要素が多く、そのことを反映して、いくつかの点で訴訟手続に変更が加えられています。

 

 

3 第一に挙げられるのは、第一審の裁判管轄です。

  平成15年までは、特許侵害訴訟は全国の地方裁判所で取り扱われ、その控訴審も全国の高等裁判所で取り扱われていました(昔の裁判例を検索すると、様々な地方裁判所や高等裁判所で特許侵害訴訟が処理されていたことが分かります)。

 ですが、現在では、東日本に所在する地方裁判所が管轄権を有するとされる場合には東京地方裁判所に、西日本に所在する地方裁判所が管轄権を有するとされる場合には大阪地方裁判所に、専属的に管轄権が生じるとされています。

 つまり、特許侵害訴訟を提起する場合、原告は、東京地方裁判所か、大阪地方裁判所のいずれかの裁判所に訴訟を提起しなければなりません。これは、特許侵害訴訟は専門技術的要素が強いので、従前から専門的な処理体制の整った裁判所で審理判断するのが適切であると判断されたためです。

 

4 第二に挙げられるのは、第二審の裁判管轄です。

  第一審と同様、平成15年までは、控訴審は、全国の高等裁判所で取り扱われていました。ですが、現在では、知的財産高等裁判所のみが控訴審の管轄権を有することとされています。

 

5 このように、特許侵害訴訟はこれを取り扱う裁判所が限定されていますが、このことは、実務上、大きな意味を持ちます。

 既述のとおり、特許侵害訴訟の一審裁判所は東京地方裁判所と大阪地方裁判所に限定されています。このうち、東京地方裁判所には民事事件を担当する部が50以上ありますが、これらの全ての部が特許侵害訴訟を担当するわけではありません。東京地方裁判所において特許侵害訴訟を担当するのは、民事第29部、第40部、第46部、第47部の4か部しかありません。

 同様に、大阪地方裁判所には民事事件を担当する部が30弱ありますが、その中で特許侵害訴訟を担当するのは、民事第21部と第26部の2か部しかありません。

 また、知的財産高等裁判所には合計4か部しかありません。

 各部には部長(裁判長)は1名しかいませんので、日本には、特許侵害訴訟を取り使う裁判長は、地方裁判所レベルで6名(東京4名・大阪2名)、高等裁判所レベルで4名の合計10名しかいないことになります。

 もちろん、裁判長とともに事件を処理する裁判官(陪席裁判官)もいますが、いずれにせよ、日本において特許侵害訴訟を担当する裁判官の人数は非常に限られているということができます。

 

6 特許侵害訴訟を担当する各裁判所の担当部の作成する判決文には、特許法の解釈に関するその担当部の考え方が色濃く反映することがあります。また、特許侵害訴訟を担当する裁判官が特許法の解釈について論文を公表することもあり、その論文にはその裁判官の考え方が反映されていることもあります。

 そのため、特許侵害訴訟の当事者としては、それらの判決文や論文を通じて、自分の事件を担当している裁判体の考え方を理解することが肝要です。一般の民事訴訟では裁判体についてそこまで調査することは困難であり、このようなことができるのも特許侵害訴訟における実務上の特徴の一つと言えます。

 

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髙﨑 仁弁護士
髙﨑 仁Jin Takasaki

私は日本の法律事務所での弁護士業務だけではなく、米国の法律事務所でも経験を積み、事務所を開設いたしました。

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所属団体

  • 第一東京弁護士会所属

経歴

  • 1993年

    東京大学法学部卒業

  • 1995年

    第一東京弁護士会弁護士登録(47期)
    西村総合法律事務所(現西村あさひ法律事務所)入所

  • 1998年

    兼子・岩松法律事務所に移籍

  • 2003年

    米国ニューヨーク大学ロースクールLL.M(法学・修士号取得)
    米国ニューヨーク州司法試験合格
    米国法律事務所(Andrews Kurth L.L.P)(テキサス州ダラス)においてアソシエイトとして勤務

  • 2005年

    新保法律事務所に移籍

  • 2011年

    新保・髙﨑法律事務所(パートナー)

  • 2017年

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  • 2019年

    髙﨑法律事務所開設

著書

  • 知的財産権辞典/共著・三省堂 (2001年)
  • コンサイス法律学用語辞典/共著・三省堂 (2003年)

その他

  • 日本債券信用銀行内部調査委員会副委員長補佐(1999年1月)
  • 東邦生命相互保険会社内部調査委員会委員長補佐(1999年6月)
  • 大正生命保険株式会社内部調査委員会委員長補佐(2000年10月)
  • ワシ興産株式会社、ワシマイヤー株式会社および
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